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バフォメットファンを自称する    INTエルフ。風属性。     ゴスロリ大好き。


by cursedbird
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おっさんのクリスマス

12月25日。
クリスマス。

俺は、公園の入り口にいた。
いろいろと、思うところがあったからだ。


手には、かわいらしく包装されたあるモノを抱えている。
・・・あの店員め。クリスマスだからってやりすぎだ。
これが、彼女や子供に渡すものに見えるのだろうか。


ベンチを見ると、見慣れたトレンチコート姿があった。
よかった、実を言うと、会えないかと思っていたから。

「おっさん」

声をかける。
一瞬、迷ったような素振りを見せるが、結局、振り向いて片手をあげる。
「やぁ」
いつもの、人のよさそうな、それで居て寂しそうな笑み。

いつものベンチに腰掛けて、今日は俺がコーヒーを差し出した。
「母さん、元気にやってるから。」
唐突な俺の言葉にも、おっさんは静かに
「そうか。」
とだけ答える。
別に、いつ気づいた、というわけじゃない。
なんとなく、そう思った。
それが、今のおっさんの反応で、ハズレじゃなかったことがわかった。
「父さんも、いい人だから。」
「そうか。」
おっさんは、ただ静かにうなずく。

しばらく、俺たちはお互いに無言でコーヒーを飲んでいた。
さすがに、沈黙が痛くなってきたので、俺は帰ることにした。
「おっさん、これ。」
「・・・なんだい?」
「スーツ。やっすいのだけど。」
「・・・そうか。」
その反応が、何かおかしくて。
思わず笑ってしまった。
「おっさん、メリークリスマス。」
「・・・ああ、メリークリスマス。」
最後に二人で笑いあって、

俺は、公園を後にした。





                     おっさんのクリスマス
                           Fin
by cursedbird | 2006-12-25 07:58 | 小説